2005年8月 横川詠一
会社の後輩のハセっちゃんとラーメンを食べたときのお話
「よく行くラーメン屋があるんですけど、そこ行きます?」
ハセッちゃんに言われ、武蔵浦和の太平庵に昼飯を食いに来た。
ハセッちゃんは最近会社に入って来た高卒19歳の後輩。
スキンヘッドで筋肉質、体毛が薄く、ぬるっとした感じ。
ズングリした姿は「モグラたたきのモグラ」
ハセッちゃんの「エサをもらうヒナのモノマネ」は、なかなかのもので、Tシャツの袖の中に、腕を折ってヒジをバタバタする。
そのとき、普段ない首をグゥっと伸ばす。それを一瞬だけやって、すぐ素に戻る。
「親鳥きた」って言うと、またヒナやって、すぐ素に戻る。
素のときのすまし顔と、必死なのに首が、チョイしか伸びないとこがいい。
「こうゆうの高二んとき、よくやってたん(やらされてたん)スけど、Tシャツの袖が、みんなビロビロなんスよ、すぐビロビロなんスよ、すぐっスよ、ビロビロッビロビロッ」ビロビロうるさいので、会社のTシャツを一枚あげた。
ハセッちゃんときた太平庵は、商店街にある小さな店で、色あせた「日本一うまい」ののぼりが三本たっている。
店に入るとパラパラと4〜5人の常連風のおっさんとほおの痩けた40代の店主。
(昼時にこの客の数?日本一ののぼり?)
「ここ本当にうまいの?」
「全然。まずいっスよ」
「‥‥‥エッ?」
「えって、俺うまいって言いましたっけか?」
「よく来るんでしょ?」
「来ますよ。」
「エッ」
「絶対、ハマりますよ」
ダメだ、全然意味がわからないと思いつつ、壁のメニューを見てると、
「みそラーメンにしといた方がいっスよ」
「うまいの?」
「他のキツいっすよ、完食できないから。ホラあのテレビの下のおっさん」
おっさんは甲子園の二回戦、京都外語大附属対どっかの試合の四回裏を見ている。
箸は完全に止まっていた。
「あれ醤油ですね。醤油は本当にキツいんスよ」
「ちょっと待て。『醤油は本当にキツいんスよ』じゃねーよ。何でだよ」
「シッ。シー。聞こえちゃうから。とりあえず、みそでいいっスか?早く注文しないと時間かかるんスよ、この店。」
「いいけど」
「みそ二つ」
あいよーっと店主は甲子園、見ながら口だけで返事をした。
「そんなにまずい?」
「ダイブ、きてますよ。でもちょっとドキドキしてきたでしょ?どんな味か」
「しねーよ、バカ」
「これ今日みそ食うと、なんでか、醤油食べてみたくなるんですよ、なんでか」
「なんねーよ、バカ」
ハセッちゃんは、この店の「我慢して食ってると、うまいかまずいかわからなくなってくる味」が気になって、たまに食べに来ちゃうらしい。
それと、自分と同じような常連が首かしげながら醤油ラーメン食べてる姿に一体感?があるそうです。
みそラーメンが来た。
ハセッちゃん、間違いなくまずいよコレは。半分で残した。
わざわざ、まずいものを食いに行くということ、(いろんなまずさがあるらしい)奥が深そうだし、今度「よく行くカレー屋」に行く約束をした。